酒さ
酒さとは
酒さ(しゅさ)は、主に頬・鼻・あご・額など顔の中心に赤みやほてりが出やすくなる、慢性的な炎症性皮膚疾患です。
いわゆる「赤ら顔」の代表的な病気で、毛細血管が目立つタイプ、ニキビのようなブツブツや膿をもったできものが出るタイプ、鼻の皮膚が厚くなるタイプ、目の症状を伴うタイプなどがあり、これらが単独または混在してみられます。ざ瘡(にきび)と似ることがありますが、酒さでは一般に面皰(白ニキビ・黒ニキビ)を伴わない点が大きな違いです。
酒さは「顔が赤くなりやすい体質」だけではなく、皮膚の炎症と血管の反応が関わって起こる病気です。
症状は良くなったり悪くなったりを繰り返し、完全に放置して自然に消えてしまうというよりは、悪化因子を避けながらスキンケアや治療で上手にコントロールしていく病気です。
「ただの敏感肌かな」「大人のニキビかな」と思っているうちに長引いていることも少なくありません。
特に、赤みが続く、ヒリヒリする、ほてる、ニキビ治療でよくならない、といった場合には酒さを考える必要があります。
主な症状
酒さの主な症状は、顔の赤み、ほてり、毛細血管の目立ち、ヒリヒリ感やしみる感じ、そしてニキビのような赤いブツブツや膿疱です。赤みは、最初は一時的でも、徐々に長く残るようになることがあります。
また、目の症状を伴うこともあり、目の充血、乾燥感、しみる感じ、まぶしさ、まぶたの腫れ、ものもらいを繰り返すなどがみられることがあります。
皮膚症状がそれほど強くなくても、目の不調が前面に出ることがあります。
進行すると、特に鼻の皮膚が厚くなって凹凸が目立つ「鼻瘤(びりゅう)」の状態になることがあります。
これは、頻度は高くありませんが、長く続く酒さでみられることがあるため注意が必要です。
原因
酒さの原因は一つに特定されておらず、体質、皮膚のバリア機能、炎症の起こりやすさ、血管の反応性、環境因子などが複雑に関わると考えられています。
一方で、悪化しやすいきっかけは比較的よく知られており、紫外線、急な温度変化、暑さや寒さ、風、アルコール、香辛料、熱い飲み物、強い運動、精神的ストレスなどで症状が強くなることがあります。
すべての方に同じ悪化因子が当てはまるわけではありません。
検査および診断
酒さは、多くの場合、問診と視診を中心に診断します。
顔のどこに、どのような赤みやブツブツが出るのか、ほてりやヒリつきがあるか、どんな時に悪化するか、目の症状がないか、といった点を確認しながら診断を進めます。
皮膚科では、皮膚だけでなく目の症状もあわせて確認することが大切です。
酒さをはっきり示す特別な採血項目があるわけではありません。
必要に応じて、似た病気を除外するために血液検査、皮膚生検、ほかの検査を追加することがあります。
まれなタイプが疑われる場合には、皮膚の一部を調べる検査が役立つこともあります。
治療
酒さの治療は、症状のタイプに合わせて行います。
丘疹や膿疱が目立つ「丘疹膿疱型」では、国内ガイドラインで0.75%メトロニダゾール外用が強く推奨されています。
アゼライン酸外用は、国内エビデンスは多くないものの、選択肢の一つとして位置づけられています。
赤みや毛細血管拡張が主体の「紅斑毛細血管拡張型」では、毎日のスキンケアと悪化因子の回避が基本となり、必要に応じてレーザーやIPL(光治療)が検討されます。
国内ガイドラインでは、パルス色素レーザー、Nd:YAGレーザー、IPLが選択肢の一つとして挙げられています。
ブツブツが強い場合や再燃を繰り返す場合には、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリンなどの内服が選択肢になることがあります。
加えて、酒さでは薬だけでなく、刺激の少ない洗顔、保湿、紫外線対策を治療の土台として続けることがとても重要です。
診断の注意点
酒さは、にきび、脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎、湿疹、口囲皮膚炎、全身性エリテマトーデスなど、顔が赤くなるほかの病気と見分ける必要があります。
特に「にきびのように見えるのに白ニキビ・黒ニキビがはっきりしない」「赤みやほてりが前面に出る」というときは、酒皶を疑うきっかけになります。
また、顔にステロイド外用薬を長く使うことで、酒さ様皮膚炎や口囲皮膚炎が起こることがあります。
自己判断で顔の赤みにステロイドを漫然と塗り続けると、かえって診断を分かりにくくしたり、症状を悪化させたりすることがあるため注意が必要です。
日常生活で気をつけたいこと
酒さでは、毎日の刺激を減らすことがとても大切です。
洗顔はこすらず、低刺激の洗顔料でやさしく行い、ぬるま湯で流します。
洗顔後は保湿を行い、乾燥やヒリつきを防ぎます。角質ケアのしすぎ、スクラブ、アルコールを多く含む化粧品、刺激の強いスキンケアは避けたほうが安心です。
また、紫外線は代表的な悪化因子のため、季節を問わず日焼け止めを使うことが重要です。
一般にはSPF30以上・広範囲を防げるタイプが勧められます。帽子や日傘も役立ちます。
食べ物や飲み物については、「全員が必ず控えるべきもの」が決まっているわけではありません。
アルコール、辛いもの、熱い飲み物、長風呂、運動、ストレスなど、どれで悪化しやすいかは人によって違うため、「何をした時に赤くなりやすいか」を記録して、自分の悪化因子を知ることが大切です。
当院の酒さ(しゅさ)の治療
当院では、まず赤みが主体なのか、ブツブツや膿疱が主体なのか、目の症状を伴っていないかなどを丁寧に確認し、酒皶のタイプに合わせて治療方針を組み立てます。
保険診療の外用薬・内服薬に加えて、刺激を減らす洗顔や保湿、紫外線対策など、毎日のスキンケアまで含めてわかりやすくご説明します。
丘疹や膿疱が目立つタイプでは外用治療を中心に、必要に応じて内服治療を検討します。
赤みやほてりが目立つタイプでは、悪化因子の見直しやスキンケア指導に加えて、IPL(Stellar M22)などの治療も選択肢としてご案内します。
また、状態に応じてアゼライン酸外用として「DRX AZAクリア®」をご案内しています。
AZAクリア®はアゼライン酸を整肌成分として配合したクリームで、クリニックでカウンセリングを受けたうえで購入できる製品です。
国内ガイドラインでも、アゼライン酸外用は丘疹膿疱型酒皶の治療選択肢の一つとされています。
このような場合は早めの受診をおすすめします
顔の赤みが数週間以上続く、ほてりやヒリヒリ感が続く、にきび治療をしても改善しないブツブツがある、毛細血管が目立ってきた、鼻の皮膚が厚くなってきた、といった場合は一度皮膚科での診察をおすすめします。
酒皶は早めに診断して、刺激を減らしながら適切な治療を始めたほうが、悪化を抑えやすくなります。
特に、目の充血、乾燥感、痛み、まぶしさ、見えにくさなどがある場合は、眼型酒さの可能性もあるため早めの相談が大切です。
目の症状は皮膚症状の強さと一致しないこともあります。
よくある質問
Q.酒さは人にうつりますか?
A. うつる病気ではありません。感染症ではなく、皮膚の炎症や血管反応、体質、環境因子などが関係して起こる病気です。
Q.酒さとにきびの違いは何ですか?
A. どちらも赤いブツブツが出ることがありますが、酒皶は顔の赤みやほてり、毛細血管拡張が目立ちやすく、一般に面皰(白ニキビ・黒ニキビ)を伴わない点が診断の手がかりになります。
Q.一度治れば、もう再発しませんか?
A. 酒さは慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返しやすい病気です。
ただし、悪化因子を避け、適切な治療とスキンケアを続けることで、症状をかなり落ち着かせることが期待できます。
Q.お酒や辛いものは絶対にやめたほうがよいですか?
A. 必ずしも全員に共通ではありません。
アルコールや香辛料で悪化する方はいますが、何が症状を悪くするかには個人差があります。
自分の悪化因子を知って調整することが大切です。
Q.スキンケアやメイクはしてもよいですか?
A. 可能です。大切なのは、低刺激でやさしい製品を選び、こすらないことです。
洗顔・保湿・日焼け止めは酒皶治療の基本で、刺激の強い成分や過度な角質ケアは避けたほうが安心です。
Q.アゼライン酸外用は酒皶に使えますか?
A. はい、丘疹や膿疱が目立つタイプでは選択肢の一つです。
国内ガイドラインでは「選択肢の一つとして推奨」とされており、当院でも状態に応じてDRX AZAクリア®をご案内しています。
なお、使用初期に軽いピリつきを感じることがあります。
まとめ
酒さは、顔の赤み、ほてり、毛細血管の目立ち、にきびのようなブツブツを繰り返す慢性の皮膚疾患です。
にきびや湿疹と間違われることもありますが、診断がつけば、スキンケアの見直しと症状に合わせた治療でコントロールしやすくなります。
顔の赤みが長引く方、刺激感が続く方、にきび治療で改善しない方は、お早めにご相談ください。
※本記事は、当院院長が医学的知見と日常診療をもとにまとめています。
院長 水野 謙太
