脂腺増殖症
脂腺増殖症とは
脂腺増殖症は、皮脂をつくる脂腺が大きくなって目立ってくる良性の皮膚病変です。
中高年以降の方の額、鼻、頬など、皮脂腺の多い顔面にみられやすく、小さな黄色っぽいブツブツとして気づかれることが多いです。
大きさは多くが1〜4mm前後で、健康上大きな害はありません。
見た目が気になって受診されることが多い一方、脂腺増殖症は悪性腫瘍ではありません。
ただし、外見が似る病変の中に基底細胞がんなどが含まれることがあるため、自己判断せず一度診察で確認することが大切です。
主な症状
典型的には、皮膚色〜黄白色の、やわらかめでつやのある小さな盛り上がりとしてみられます。
よく見ると、中央が少しくぼんだように見えることがあり、周囲に小さな血管が目立つこともあります。
複数個できることも珍しくありません。
多くは痛みやかゆみのない無症状ですが、顔の目立つ場所にできるため、見た目の問題で気になる方が多い病変です。
とくに「ニキビが治らない」「いぼのようなものが増えてきた」と感じて受診されることがあります。
原因
脂腺増殖症は、脂腺そのものが大きくなることで生じます。
はっきりした単一の原因があるわけではありませんが、加齢とともにみられやすく、皮脂腺の変化が背景にあると考えられています。
中高年の顔面に多いのもそのためです。
また、免疫抑制状態の方で目立つことがあることも知られています。
ただし、患者さんの多くは特別な病気があるわけではなく、一般的によくみられる良性病変としてみつかります。
検査および診断
診断は、まず見た目、できている場所、数、経過から行います。
脂腺増殖症には比較的特徴的な所見があり、診察でかなり推定できます。
必要に応じてダーモスコピーで拡大して観察すると、黄色い分葉状の構造や、病変の周囲を取り巻くような血管所見が参考になります。
ただし、見た目が典型的でない場合や、単発で目立つ場合、徐々に大きくなっている場合には、基底細胞がんとの鑑別が重要になります。そのようなときは、皮膚生検や薄いシェーブ生検を検討することがあります。
治療
脂腺増殖症は良性で、必ずしも治療が必要な病気ではありません。
見た目が気にならなければ、経過をみるという選択も十分にあります。
治療を行う場合は、主に局所処置が中心になります。
代表的には、電気焼灼、レーザー蒸散、シェーブ、凍結療法、キュレット処置などが用いられます。
どの方法でも改善は期待できますが、顔の病変では色素沈着や瘢痕のリスク、そして再発の可能性を考えながら選ぶことが大切です。
病変が多発している場合や、局所処置だけでは対応しにくい場合には、イソトレチノイン内服が選択肢になることがあります。
イソトレチノインは脂腺を小さくする作用があり、広範囲の脂腺増殖症に有効とされていますが、中止後に再発しやすいことがあり、数か月単位の治療が必要になることがあります。
診断の注意点
脂腺増殖症は、ニキビ、稗粒腫、汗管腫、老人性いぼなどと間違われることがありますが、特に注意が必要なのは基底細胞がんです。
脂腺増殖症は黄色調で中央が少しくぼみ、血管が病変の周囲にみられることが多い一方、基底細胞がんは赤みや不規則な血管、増大傾向を伴うことがあります。
「長くあるから大丈夫」とは限らず、急に大きくなる、出血する、かさぶたを繰り返す、色が不均一といった場合には、別の病変の可能性も考えて慎重に診る必要があります。
日常生活で気をつけたいこと
脂腺増殖症そのものをセルフケアで完全に治すことは難しく、自分でつぶす、針で刺す、無理に押し出すことはおすすめできません。
炎症、色素沈着、傷跡の原因になることがあります。
また、日常的には肌をこすりすぎないこと、刺激の強い自己処置を避けることが大切です。
スキンケア製品で新しい病変ができにくくなる可能性はありますが、すでにある脂腺増殖症を消す治療とは別です。
気になる病変がある場合は、まず診断を受けることをおすすめします。
当院の治療
当院では、まずそのブツブツが本当に脂腺増殖症なのかを丁寧に診察し、ニキビや稗粒腫、汗管腫、基底細胞がんなどの似た病変と見分けたうえで治療方針をご提案します。
見た目が気になる場合には、病変の数や大きさ、部位に応じて処置方法をご相談します。
また、多発している脂腺増殖症や、繰り返し出てくるタイプでは、イソトレチノイン内服も治療選択肢のひとつです。
脂腺を小さくする作用が期待できる一方で、すべての方に適するわけではなく、乾燥などの副作用や、妊娠中・妊娠の可能性がある方には使用できない点にも注意が必要です。
当院では、適応を丁寧に判断したうえでご相談しています。
このような場合は早めの受診をおすすめします
顔の黄色っぽい小さなブツブツが増えてきた、なかなか治らない、見た目が気になるという場合は、一度ご相談ください。
脂腺増殖症は良性のことが多いものの、見た目だけでは別の病変と区別しにくいことがあります。
また、急に大きくなる、赤みが強い、出血する、痛みがある、表面が崩れるといった場合は、脂腺増殖症以外の病変を除外することが大切です。
診断に迷う場合には、必要に応じて組織検査を検討します。
よくある質問
Q.脂腺増殖症はニキビですか?
A. いいえ、同じではありません。
ニキビは炎症や毛穴詰まりが主体ですが、脂腺増殖症は脂腺そのものが大きくなった良性病変です。
見た目が似ることはありますが、治療の考え方は異なります。
Q.悪いものではないですか?
A. 脂腺増殖症そのものは良性です。
ただし、基底細胞がんなど見た目が似た病変もあるため、特に単発で目立つ場合や変化している場合は診察をおすすめします。
Q.自然に治りますか?
A. 自然に完全に消えることはあまり期待しにくく、長く残ることがあります。
健康上の問題は少ないため、気にならなければ経過観察でも構いません。
Q.イソトレチノインは脂腺増殖症にも使えますか?
A. はい。多発例や広範囲の例では選択肢になります。
脂腺を小さくする作用が期待できますが、治療中止後に再発することがあり、適応や副作用の確認が大切です。
Q.1回で全部きれいになりますか?
A. 病変の数や深さによります。
局所処置で改善しやすいこともありますが、再発したり、別の部位に新しくできたりすることがあります。
Q.自分で取ってもよいですか?
A. おすすめしません。自己処置では改善しにくく、炎症や色素沈着、傷跡の原因になります。
まずは診断を確認したうえで、適切な方法を相談するのが安心です。
まとめ
脂腺増殖症は、顔にできやすい黄色っぽい小さな良性病変で、見た目の悩みの原因になりやすい一方、健康上は大きな問題にならないことが多い病気です。
ただし、基底細胞がんなどと見分けが必要なことがあるため、自己判断せず、気になる病変は皮膚科で確認することが大切です。
多発例ではイソトレチノイン内服も含め、病変の数や部位に応じて治療を検討できます。
※本記事は、当院院長が医学的知見と日常診療をもとにまとめています。
院長 水野 謙太
