尋常性白斑
尋常性白斑とは
尋常性白斑は、皮膚の色をつくるメラノサイト(色素細胞)が減少したり消失したりすることで、皮膚の色が白く抜けて見える病気です。後天的に起こる白斑の中では代表的な病気で、顔、手、足、体幹など、さまざまな部位にみられます。見た目の変化が中心の病気ですが、顔や手など目立つ部位では、生活の質(QOL)に大きく影響することがあります。
また、人にうつる病気ではありません。清潔にしていないから起こるわけでもなく、接触で周囲へ広がることもありません。正しい診断を受けたうえで、病気の広がりや進行性に応じた治療を考えていくことが大切です。
尋常性白斑の主な症状
主な症状は、境界が比較的はっきりした白い斑点・白いまだらです。はじめは小さな白斑でも、徐々に広がったり、数が増えたりすることがあります。顔、首、手指、足、肘、膝、わき、陰部、口のまわりなどにみられやすく、髪の毛、まゆ毛、まつ毛、ひげなどが白くなることもあります。唇や口の中、鼻の中など粘膜に近い部位に変化が出ることもあります。
症状の出方には個人差があります。少数の白斑だけで長く落ち着く方もいれば、短期間で範囲が広がる方もいます。とくに非分節型では複数部位に広がることがあり、分節型では片側性に出ることが多いとされています。
尋常性白斑の原因
尋常性白斑の原因はひとつではなく、自己免疫の関与、遺伝的ななりやすさ、皮膚への刺激や外傷など、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。自己免疫とは、本来は体を守るはずの免疫が、自分のメラノサイトを攻撃してしまう状態です。
家族内に白斑のある方がいる場合は発症しやすさに関係することがありますが、必ず遺伝する病気というわけではありません。また、強い日焼け、こすれ、傷、慢性的な摩擦などをきっかけに白斑が目立ってくることがあり、これをケブネル現象と呼びます。
さらに、尋常性白斑では自己免疫性甲状腺疾患など、ほかの自己免疫疾患を合併することがあるため、必要に応じて血液検査を行います。
尋常性白斑の検査および診断
尋常性白斑は、皮膚科での視診・問診だけで診断できることが多い病気です。いつから出てきたか、どのように広がったか、左右差があるか、家族歴があるか、毛が白くなっていないかなどを丁寧に確認します。白斑の種類、範囲、進行性は、治療方針を決めるうえで重要です。
診断がはっきりしない場合には、Wood(ウッド)灯、皮膚生検、真菌検査(KOH直接鏡検など)、必要に応じた血液検査を追加します。 Wood(ウッド)灯は、白斑が「本当に色素が抜けている脱色素斑」なのか、それとも「色が少し薄い低色素斑」なのかを見分けるのに役立ちます。
また、尋常性白斑では自己免疫性甲状腺炎の合併が比較的多いため、必要に応じてTSH、FT3、FT4、抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体などを調べることがあります。既往歴や症状からほかの自己免疫疾患が疑われる場合は、追加検査や他科連携を検討します。
尋常性白斑の治療
尋常性白斑の治療は、白斑の範囲、部位、進行しているかどうか、年齢などを踏まえて選びます。治療の目標は、白斑の広がりを抑えることと、可能であれば再び色を戻すことです。効果が出るまでに時間がかかることも多く、数週間ではなく数か月単位で経過を見ることが少なくありません。
外用治療では、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏が使われます。とくにタクロリムス軟膏は有効性が期待され、3〜6か月を目安に効果判定を行うことが示されています。部位によっては薬の使い分けが重要で、顔や首など皮膚の薄い部位では慎重に外用を選びます。
光線療法は白斑治療の中心的な選択肢のひとつです。NB-UVB(ナローバンドUVB)は、進行期の非分節型白斑や、広がりのある症例で重要な治療とされています。通常は週1〜2回程度で行い、色素の戻りには6か月以上かかることがあります。
白斑が限られた範囲であれば、308nmのターゲット型UVB(エキシマレーザー/エキシマライトなど)が選択肢になります。病変部を狙って照射できるため、正常皮膚への不要な照射を抑えやすい治療です。
進行が速い広範囲例では、全身治療を検討することがあります。また、1年以上安定している白斑では、植皮などの外科的治療が適応になることがあります。とくに分節型や整容的に気になる部位では、専門施設で手術的治療が検討されます。
色が戻ってきたあとも再発することがあり、維持療法が重要です。色素再生部位へのタクロリムス軟膏の間欠外用などで再発率が下がる可能性が示されています。
尋常性白斑の診断の注意点
白い斑点がある=すべて尋常性白斑、ではありません。 皮膚科では、まず「本当に色素が抜けている病変かどうか」を見極め、そのうえで似た病気を除外していきます。
鑑別が必要な病気としては、炎症後脱色素斑、白色粃糠疹、癜風(でんぷう)、脱色素性母斑、老人性白斑、線状苔癬、サットン母斑、薬剤誘発性脱色素斑、色素脱失性菌状息肉症などがあります。さらに、先天性・遺伝性の病気としてまだら症、ワールデンブルグ症候群、眼皮膚白皮症なども鑑別に入ります。
また、フォークト―小柳―原田病のように、白斑に加えてぶどう膜炎、髄膜炎、難聴などを伴う病気もあります。眼の症状、耳の症状、神経症状を伴う場合は、単なる皮膚の白斑として見逃さず、必要に応じて他科連携が必要です。
さらに、悪性黒色腫の治療中にみられる白斑や、色素斑の間に正常皮膚が白く見えてしまうケースなど、見た目だけでは判断が難しいこともあります。自己判断で「白斑だろう」と決めつけず、皮膚科で診断を受けることが大切です。
日常生活で気をつけたいこと
白斑部は色素が少ないため、日焼けしやすく、赤くなりやすい部位です。白斑そのものが悪化するのを防ぐ意味でも、周囲の皮膚との色の差を強くしすぎない意味でも、日焼け止め、帽子、衣類などで紫外線対策を行うことが大切です。
また、こする、かく、締めつける、慢性的に擦れるといった刺激が、新しい白斑のきっかけになることがあります。タオルで強くこする習慣、きつい衣類や靴、反復する摩擦には注意しましょう。
見た目が気になる場合は、カバーメイクやカモフラージュを取り入れるのもひとつの方法です。これは病気そのものを治す治療ではありませんが、日常生活の負担を軽くする助けになります。なお、現時点で特定の食事だけで白斑が治るという医学的根拠は乏しいとされています。
当院の尋常性白斑の治療
当院では、白斑の広がりや部位に応じて、外用治療と光線療法を組み合わせて治療を行います。限局した白斑には、セラビーム® UV308 mini LEDによる308nmのターゲット型光線療法も行っており、病変部を中心に照射しながら治療を進めます。必要に応じて検査や専門医療機関との連携も行い、わかりやすい説明を心がけています。
このような場合は早めの受診をおすすめします
白い斑点が急に増えてきた、短期間で広がっている、顔・手・指先・口まわり・陰部など目立ちやすい部位に出てきた場合は、早めの受診をおすすめします。
進行期かどうかを見極めることは、治療選択にとても重要です。
また、白斑の部位の毛が白くなってきた、小児に出てきた、自己免疫疾患の既往がある、家族に白斑や甲状腺疾患の方がいる場合も、一度皮膚科で相談すると安心です。
白斑に加えて、目のかすみ・まぶしさ・頭痛・耳鳴り・聞こえにくさなどがある場合は、皮膚以外の病気が関係していることもあるため、早めの評価が必要です。
よくある質問
Q.尋常性白斑はうつりますか?
A. うつりません。接触、入浴、食器の共用などで周囲の人にうつる病気ではありません。
Q.遺伝する病気ですか?
A. 体質的になりやすさはありますが、必ず親子で受け継がれる病気ではありません。家族歴が関係することはあっても、単純に「遺伝病」と言い切れるものではありません。
Q.治療で元の色に戻りますか?
A. 戻る可能性はありますが、部位や病型、進行性によって差があります。外用薬や光線療法で色が戻ることがありますが、時間がかかることも多く、再発予防のための維持療法が必要になる場合があります。
Q.血液検査は必要ですか?
A. 全員に必須ではありませんが、甲状腺の自己免疫疾患などを合併することがあるため、必要に応じて行います。とくに症状や既往歴がある場合は検査をおすすめすることがあります。
Q.日焼け止めやメイクはしてもよいですか?
A. はい。むしろ紫外線対策は大切ですし、カバーメイクは日常生活の負担を軽くする助けになります。
Q.ストレスで起こりますか?
A. ストレスだけが原因とは言えませんが、自己免疫、体質、外傷や強い日焼けなど複数の要因が関係すると考えられています。ストレスを含め、体調変化がきっかけとして関与する可能性はあります。
Q.子どもでもなりますか?
A. はい、子どもにもみられます。小児では長期的な安全性に配慮しながら治療を選ぶ必要があるため、早めに皮膚科で相談することが大切です。
まとめ
尋常性白斑は、皮膚の色素をつくる細胞が減ることで起こる病気で、うつる病気ではありません。白い斑点が出たときは、尋常性白斑だけでなく、感染症や炎症後の変化、先天性の色素異常症など、さまざまな病気との見分けが大切です。早めに正確な診断を受け、病変の範囲や進行性に合わせた治療を行うことで、より良い経過につながります
※本記事は、当院院長が医学的知見と日常診療をもとにまとめています。
西新井みずの皮膚科クリニック
院長 水野 謙太
