ヘルペス(口唇や性器)
ヘルペスとは
口唇ヘルペスと性器ヘルペスは、どちらも単純ヘルペスウイルス(HSV)による感染症です。
HSVには主に1型(HSV-1)と2型(HSV-2)があり、一般にHSV-1は口唇に、HSV-2は性器に再発しやすいとされていますが、実際にはオーラルセックスなどを介して口のヘルペスが性器に、性器のヘルペスが口にうつることもあります。
いったん感染するとウイルスは体内の神経に潜伏し、体調不良やストレスなどをきっかけに再発することがあります。
口唇ヘルペスは、唇やその周囲にできるヘルペスです。
性器ヘルペスは、外陰部、陰茎、肛門まわりなどに症状が出るヘルペスで、性感染症(STI)のひとつとして扱われます。
どちらも同じ「単純ヘルペス」の仲間ですが、症状の出る部位や感染のきっかけ、再発のしやすさに違いがあります。
初めて感染したときは症状が強く出ることがありますが、再発では比較的軽く済むことも少なくありません。
一方で、まったく症状がないのにウイルスが出ていることもあり、本人が気づかないままうつしてしまうことがある点は、この病気の大きな特徴です。
主な症状
口唇ヘルペスでは、唇やその周囲にピリピリ、ムズムズ、熱っぽい感じ、違和感が先に出て、その後に小さな水ぶくれやただれが現れることがあります。
のどに初めて感染した場合には、発熱やのどの痛みが出ることもあります。
性器ヘルペスでは、感染後2〜7日ほどで、陰部にかゆみや違和感のある水ぶくれが現れ、破れて痛みのあるびらんや浅い潰瘍になることがあります。初感染では、発熱や足の付け根のリンパ節の腫れを伴うこともあります。
再発時は、初感染より軽いことが多い一方で、同じ部位に何度も繰り返すのが特徴です。特にHSV-2はHSV-1より再発しやすい傾向があり、頻度には個人差があります。
原因
原因は、単純ヘルペスウイルス(HSV-1、HSV-2)への感染です。
口唇ヘルペスは、病変部や唾液との接触などで感染し、性器ヘルペスは主として性行為で感染します。
オーラルセックスでも、口から性器へ、性器から口への双方向に感染しうることが知られています。
また、ヘルペスは初感染後に神経節へ潜伏し、発熱、紫外線、性交、歯科治療、ストレス、免疫の低下などをきっかけに再発することがあります。
症状が出ていない時期でもウイルスが排出されることがあり、これを無症候性ウイルス排泄といいます。
検査および診断
診断は、まず症状の出方や皮膚・粘膜の見た目から行います。
典型的な場合は診察だけである程度判断できますが、必要に応じて検査を追加します。
検査としては、病変部から採取して行うウイルス抗原検査、核酸検出法(PCRなど)、ウイルス分離などがあります。
細胞を採って顕微鏡でみる方法が使われることもありますが、この方法だけでは帯状疱疹との区別が難しい場合があります。
一方、血液検査による抗体測定は、初感染では参考になることがありますが、再発では必ずしも有用とは限りません。
症状がない人に対する血液検査は、誤判定の問題もあり、一般には慎重に考える必要があります。
治療
治療の基本は、抗ウイルス薬の内服です。
代表的にはアシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルなどが使われ、発病初期に近いほど効果が期待できるため、早めの治療開始が大切です。
軽症では外用薬が使われることもありますが、基本は内服治療が中心です。
再発を繰り返す方では、前ぶれの段階で早く飲む早期短期治療が選択肢になることがあります。
ファムシクロビルでは、再発性の口唇ヘルペス・性器ヘルペスに対し、初期症状後できるだけ速やかに開始する方法が承認されています。
年に何度も再発する性器ヘルペスでは、毎日内服して再発を減らす抑制療法を検討することがあります。
バラシクロビルは性器ヘルペス再発抑制の適応があり、日本皮膚科学会Q&Aでも年6回以上の頻回再発例で抑制療法が紹介されています。毎日の抑制療法は、他者への感染リスクを下げることにもつながります。
重症例や免疫が低下している方では、点滴治療が必要になることがあります。
診断の注意点
ヘルペスは見た目だけで判断できることも多い一方、似た病気との区別が大切です。
性器の潰瘍では、梅毒、ベーチェット病、帯状疱疹などとの鑑別が必要です。
特に初感染の性器ヘルペスは症状が強く、ほかの病気とまぎらわしいことがあります。
また、古くなった病変や水ぶくれがはっきりしない状態では、検査で診断しにくいことがあります。
再発なのか初感染なのか、他の性感染症を合併していないかも含めて、症状の経過を丁寧に確認することが大切です。
日常生活で気をつけたいこと
症状が出ている時期は、キス、オーラルセックス、性行為によって相手にうつすリスクが高まります。
特に口唇ヘルペスのある方とのオーラルセックスで口から性器へ感染することがあり、逆方向の感染も起こりえます。
ヘルペスは、見た目に症状がない時でもウイルスが出ていることがあります。
そのため、性器ヘルペスの既往がある方では、症状がなくても完全に感染リスクがゼロとはいえません。
コンドームはリスクを下げますが、皮膚どうしの接触で感染することもあるため、100%防げるわけではありません。
再発しやすい方は、睡眠不足、強い疲労、ストレス、紫外線など、きっかけになりやすい要素を意識して生活を整えることも大切です。
病変に触れたあとは手を洗い、患部を強くこすらないようにしましょう。
当院の(口唇・性器)ヘルペスの治療
当院では、まず現在の症状が本当にヘルペスかどうかを丁寧に診察し、必要に応じて検査を行います。
そのうえで、初感染か再発か、発症からどのくらい時間がたっているか、症状の強さ、再発の頻度などを踏まえて、適切な治療方針をご提案します。
治療の中心は抗ウイルス薬の内服です。再発を繰り返す方では、前ぶれの段階で始める治療や、頻回再発に対する抑制療法についてもご相談いただけます。
性器症状のある方では、必要に応じて他の性感染症や、ヘルペス以外の外陰部疾患も念頭において診療します。
「いつも同じ場所にできる」「市販薬で様子をみてよいのか迷う」「再発を減らしたい」「パートナーへの感染が心配」といったお悩みにも、できるだけわかりやすくご説明します。
このような場合は早めの受診をおすすめします
・初めての症状で、痛みや水ぶくれ、ただれが強い場合
初感染は再発より重く出ることがあり、性器ヘルペスでは発熱やリンパ節の腫れを伴うことがあります。
・症状が出て間もない場合
抗ウイルス薬は早く始めるほど効果が期待しやすいため、違和感やピリピリ感の段階でもご相談ください。
・再発を何度も繰り返している場合
早期短期治療や抑制療法が合うことがあります。
・症状がヘルペスかどうかわからない場合
性器の潰瘍は、梅毒やベーチェット病など他の病気でも起こるため、自己判断はおすすめできません。
・症状が強い、広がる、全身状態が悪い、免疫が低下している場合
重症では点滴治療が必要になることがあります。
よくある質問
Q.ヘルペスは治りますか?
A. 症状そのものは治療で改善できますが、ウイルスは神経に潜伏するため、完全に体からなくすことは難しい病気です。ただし、再発時の早期治療や抑制療法でコントロールは可能です。
Q.水ぶくれがない時でもうつりますか?
A. はい。
ヘルペスは症状がない時でもウイルスが出ていることがあり、特に性器ヘルペスでは無症候性ウイルス排泄が知られています。
Q.口唇ヘルペスが性器にうつることはありますか?
A. あります。オーラルセックスによって、口から性器へ、また性器から口へ感染することがあります。
Q.再発の前ぶれがわかるのですが、その時点で治療できますか?
A. はい。再発を繰り返す方で、前ぶれを自分で判断できる場合には、初期症状の段階で早く内服する治療法が選択肢になります。
Q.血液検査で必ずわかりますか?
A. いいえ。血液検査は初感染では参考になることがありますが、再発では役立ちにくいことがあります。実際には、診察所見や病変部からの検査を組み合わせて判断することが多いです。
Q.性器ヘルペスがあると、パートナーも受診した方がよいですか?
A. パートナーに症状がある場合や不安がある場合は、相談をおすすめします。
性器ヘルペスは性感染症であり、他の性感染症の確認が必要になることもあります。
まとめ
口唇ヘルペス・性器ヘルペスは、よくみられる一方で、「ただの口内炎かな」「少しかぶれただけかな」と見過ごされやすい病気です。
早い段階で治療を始めるほど症状を軽くしやすく、再発を繰り返す方では治療の選択肢も広がります。
唇や陰部のピリピリ感、水ぶくれ、ただれ、繰り返す違和感が気になる方は、お早めにご相談ください。
※本記事は、当院院長が医学的知見と日常診療をもとにまとめています。
院長 水野 謙太
